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六月燈あれこれ:六月燈と映画


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六月燈が映画の舞台になる。そう聞いてまず驚いたのは、六月燈という祭りが鹿児島にしかない、という事実を知ったことだった。「えー!ウソでしょ!?」と思わずプロデューサーに叫んだ。
一般の方にとってはまず「六月燈ってナニ?」という話になるのだろうが、鹿児島の人間にとっては夏の時期の夜祭りといえば六月燈だ。六月燈がない夏なんて想像できない…!というのは大げさにしても、それほど六月燈は鹿児島の各地で親しまれている。

六月燈とはなにかという由緒あるオハナシはこちらで見ていただくとして、改めて考えてみると、六月燈は不思議な祭だなあと思う。
六月燈は、他の祭りに比べるとだいぶ地味だ。各町内ごとに行われるので、1つあたりの規模も小さいし、燈籠が飾ってあるというだけで、神輿があるわけでも、決まった演し物があるわけでもない。ただ、夏の夜をみんなで過ごす、というだけの祭り。鹿児島の蒸し暑い夜の夕涼みのようなものだけれど、みんななぜか六月燈には愛着があり、この夜には楽しそうに燈籠のもとに出かけていく。

子どもの頃は、梅雨に入り始める5月の末頃になるともう六月燈を楽しみにしていたものだった。(子供の頃は旧暦なんかわからないので、大体六月燈という名前から6月にあると思っていた。)
地域の子ども会ではその時期から六月燈の準備が始まっていく。六月燈で奉納する紙燈籠は、毎年地域の子どもたちの描いた絵を使って作られる。花火や、祭りの様子など、夏をイメージした絵を描いて持ち寄り、それを大人たちが燈籠に仕立てる。地域によっては踊りを披露するところもあるので、夜は公民館に集まって踊りの練習をするという地域も少なくない。地域の踊りや、鹿児島名物のおはら踊りなどはこういう機会に習う。(祭りが終わればすぐに忘れてしまうのだけど、秋が来ておはら祭の時期になるとなんとなく憶えていて踊れてしまうのがフシギなところ。)
六月燈が他の祭りよりも身近に感じるのは、そういった準備段階からたくさんの人が関わって作られるからかもしれない。

みんなで作って、みんなで味わう祭り。
そういう意味では、映画にも似ているなあと思う。

映画を制作するには、それこそたくさんの人が関わる。監督・俳優・撮影チーム、美術やセットを作るチームもいれば、それら現場スタッフの賄いを作るチームもいる。ロケを行う地域のボランティアスタッフまで入れると、相当な数になるのだろう。

鹿児島で映画を作るということに対して、鹿児島フィルムオフィスの西田さんがこんなことを言っていた。「鹿児島で作るからには、鹿児島のたくさんの人に関わってもらいたい。鹿児島県の人みんなで映画を作りたい」と。
みんなで作って、みんなで味わう。きっとこの映画も、六月燈のように愛着のある映画になるんだろう。夏の夜に、みんなで楽しみに映画館へ出かけていくような。
どこか懐かしい祭りの準備は、もう始まっている。